プロジェクトストーリー
塗装の研究から生まれた、発電する夢の塗料
苦境からの脱却次代を考える
開発部門として、新技術・商品のアイデアで、新事業を創出する開発事業本部。特長の1つである塗装技術を活かし、塗装の高付加価値化に踏み出しました。微弱のひずみで電力に変換する物質 ― 圧電素子。この圧電素子を、固体から液体化※することに成功し、塗るだけであらゆるものが「発電装置」になる技術を開発しました。足かけ8年。夢の塗料の誕生でした。その陰には、日本のものづくり企業を苦しめてきた、製造業の海外生産移転にありました。コスト削減のため、人件費の他、塗装費の削減も進んでいました。長年塗装の研究を続けていた開発事業本部本部長の海野は、塗装技術の存在価値がなくなっていき、追い込まれました。
母校への訪問が開発の転機に
転機が訪れたのは、アイデアの材料を探しに、母校の山形大学を訪問した時のこと。そこで目にしたのが圧電素子でした。これまで研究してきた塗料の技術を組み合わせれば、電気を生み出す塗料ができるかもしれないとひらめきました。早速、社内でアイデアをプレゼンしましたが、「塗料で本当に発電なんてできるのか。」周囲からは、そんな意見が多くありました。しかし、当時は微小なエネルギーを電力に変換する『エネルギー・ハーベスティング』という技術が注目され、センサネットワーク、IoTなどの普及に不可欠になり、海野は将来的に大きな利益を生み出せると確信していました。その後、展示会で発電する塗料のアイデアを披露すると、各社から面白いという声が次々と出てきました。
建設業とのコラボから見えた新しい未来
この技術に最初に興味を持ったのは、大手建設メーカーでした。従来、勘とノウハウに依存していたトンネル建設。トンネル天井部のコンクリート充填状況は誰も目で確認した事がありませんでした。方法としてセンサがあるが、膨大なコストがかかる。何とか、改善できないか。その声を形にしたのが「ジュウテンミエルカ」でした。圧電素子で、建設中に生じるひずみを検知し、充填状況の見える化に成功、安全性を確保しました。今後は、既設の道路や橋梁など、インフラのメンテナンスも視野に入れています。新たな「モノ」を創出し、世の中に役立つサービス「コト」創りにも果敢に挑んでいきます。そのためにも、私たちは、未来への発想(アイデア)を大切にしていきたいのです。